日本の引越しシーズンと引越し方法
日本では学生の新入学や新入社員の入社の時期が4月であることがほとんどであり、2月・3月は一年のうちで最も引越が多い月になります。引越し作業は引越業者に依頼するのが一般的で、3月の引越しシーズンは業者にとっての繁忙期です。ただでさえ面倒が多い引っ越しをこの時期にするなら、スケジュールを組み立てて早めに準備したいものです。
アパート住まいの引越について(日本在住の外国人向)
日本のアパートは家具付きでないことが一般的です。都心では家具付きアパートは増えてきていますが、あまり多くはありません。家具無しアパートで引越しをする場合、ベッドや冷蔵庫など自分の持ち物全てを運ばなければならず、自力での運搬は難しいと引越し専門業者に依頼することになります。
友人に手伝ってもらうなどして自力で運ぶこともできますが、搬入出時に建物を気泡シートで養生するといったもろもろの手間や費用を考えると、引越し業者に依頼する方がよさそうです。
引越しは簡単ではありません
引越は荷物の移動だけではありません。様々な手続き作業がともないます。例えば電気やインターネットの契約手続き、役所への転出入届け等、やる事は少なくありません。引越し先が現在の居住地と同じ市区町村内になる場合は手続きは幾らか簡略されますが、それでも煩雑な作業は伴います。
日本でのアパート賃貸契約は2年ごとの更新が多く、更新毎に更新料を支払うくらいなら引っ越したいという気持ちにもなりますが、引越し費用と労力を考えると特に事情がないかぎり引越しは避けた方が無難です。
また、留学などで短期滞在する場合は、自分でアパートを借りるよりも共用家具付きのゲストハウス、シェアハウスでの滞在の方が面倒な手続きなしに転出・転入できます。
引越しの準備期間について
引越しの準備には少なくとも1ヶ月間が必要です。荷物運びの段取りと同時進行で様々な手続きを終わらせる必要があります。賃貸住宅の場合、大家さんとの契約上の都合もあるので、引越しが決まった時点で直ぐに準備を始めなくてはなりません。
荷物の引越し作業の流れ
以下に一般的な引越しの流れをまとめてみました。必ずしも同じ流れになるとは限りませんが、何をすべきかの参考にしてみてください。
1. 引越し業者に見積もりを依頼
先ずは引越し業者に来てもらい見積りしてもらいます。見積りは無料です。
荷物が少ない場合、例えば冷蔵庫とテーブルだけ運んでもらいたい場合ではインターネットでの見積もり依頼でも十分です。しかし、インターネットでは入力忘れによる見積もり違いで自己負担が発生するというリスクがあります。引越業者が訪問して見積してくれると、確実な見積もり額を提示してもらえます。(*引越業者は見積書を発行する義務があります。)
ポイント
- 引越し日に土日・祝日・繁忙期を避けると料金は安くなる
- 自分で梱包・開梱すると費用を節約できる
- 大荷物だけは運んでもらいたい場合は、見積もり対象とする荷物を選定しておく。
- トラックに積めるだけ積み、残りの荷物は自分で運ぶという「積み切り」依頼の場合、当日の状況で自分では運べない大物荷物が残されてしまうというリスクあり。
- 引越し前に処分する不要品があるか事前にチェックし、見積もりの対象を絞り込む。
- 不要な荷物を残して引っ越すことはできない。全所有物を残さず持ち運ぶことを前提に見積もりを依頼する。
- 備え家具付きのアパートの場合、家具は見積もりの対象から外すのを忘れずに。
- エアコンも外して新居に移設する場合、その工事費用も見積もってもらう。
*別の専門業者に依頼するという方法もあるが、別途段取りの手間を考慮すべき。 - 引越し業者は見積りをする際、「引越運送約款」の提示が義務づけられているので、契約の前に約款の内容を確認しておく。
2. 引越し日を確定し、諸手続きを開始
引越し業者と契約し、引越し日が決まれば、電気・水道・ガス・電話・ネット回線等の契約解除/新規契約、子供の転校の手続き、役所への転出届などの手続きを順次開始できます。 賃貸住宅からの引越しの場合、大家さんまたは管理している不動産屋さんに引越し日を連絡し、「立ち合い日」を設定します。
ポイント
- やることリストを作って作業すると、現居側と新居側の両方の手続きを混乱なく同時に進められる
- 電気・水道・電話・インターネット回線等の解約を忘れずに。自動支払いになっている場合、忘れていると支払い続けてしまう。
- 賃貸住宅の場合、退去するにあたって大家さんまたは管理している不動産屋に部屋のキズ・汚れ具合等をチェックしてもらう「立ち合い」が必要。通常、立ち合いは引越し日に荷物を全て運びだした後に行う。1人暮らしのため現居側・新居側での作業を全て1人でする都合により引越し日当日に立ち合いができない場合は、翌日以降にしてもらう。
- 子供がいて学校を転校する必要がある場合、学校に連絡して転校の手続きをはじめる。
3. 不用品を処分・粗大ごみを処分
小さな不用品は一般ゴミとして清掃車で回収してもらえますが、一度に大量のゴミを出すと迷惑なので数回に分けて少しずつ出すようにします。住んでいる自治体の規定に従って燃えるゴミ、燃えないゴミ、資源ごみ等の選別をして出します。
粗大ゴミの処分は規制により引越し業者に任せることはできません。自分で処理することになります。例えば椅子やテーブル等、大きな不用品の処分には以下のような方法があります。
・ リサイクルショップに持っていく
・ インターネットで売る、譲る
・ 区市町村の清掃事務所に依頼し、粗大ごみとして出す。有料。
(東京の場合)
粗大ごみ受付センターのウェブサイト( http://sodai.tokyokankyo.or.jp/ )または電話で申し込む。
↓
近くのコンビニ等で「粗大ごみ処理券」を購入し粗大ごみに貼り付ける。
*「粗大ごみ処理券」は管理自治体ごとに発行されている。A地域用の処理券はB地域では使えないので注意。
↓
粗大ごみを指定された日時・場所に置き、回収してもらう。
*洗濯機、冷蔵庫といった大型電家電品は家電リサイクル法でリサイクルが義務付けられており、自治体では収集されない。購入した販売店に引き取りを依頼するか。家電リサイクル受付センター http://www.tokyokankyo.jp/activity/data/kaden/ ) に回収を申し込む。
ポイント
- 不用品として処分したことを忘れないように、捨てる物リストを作成しておく。リストがあれば、引越し時に紛失したと勘違いしないで済む。
- 愛着があるもののしかたなく処分する物品は写真を撮っておくとベター。引っ越しの際の記録にもなる。
- 関東地区と関西地区では電気の周波数が異なるが、最近の家電はいずれの地域でも使えることが多い。周波数が違うからと処分を考える前に要チェック。周波数50/60Hzと明記されている家電はいずれの地区でも使用可能。50ヘルツとのみ単独表示されている家電は使用できる地区は限定される。
4. 荷物を梱包する(業者に頼まず自分で梱包する場合)
梱包作業は時間がかかるので、引越し日のギリギリに一度で作業するよりも、少しずつ作業しておく方が安心です。梱包の仕方が悪くて破損した場合は補償の対象外となるので、特に割れ物は丁寧に梱包したいものです。
ポイント
・梱包するダンボールは業者に用意してもらう。(有料もしくは特典としてサービスに含まれている)
・ダンボールに何が入っているか、どこに置くか等を書いておく。例:皿、キッチン
・日常であまり使わないものから詰めていく
・小物や食器類は一つずつ紙で包む
・ダンボールの底が抜けないよう、詰め込みすぎない。
・布団やカーテンを梱包材代わりに絶対に使わない。 これらをガラス類の梱包に使って破損した場合、割れたガラスで使えなくなる二重の損害が発生。
5. 新居の室内レイアウトを考え、引越し直後から生活できる準備をしておく
冷蔵庫、テレビ、洗濯機など、自分一人では動かせない備品の配置をあらかじめ決めておけば、荷物を運び入れてもらうと同時に設置してもらえます。
ポイント
- 電話やインターネットの接続は後々でもよいとして電気・水道だけは引越し当日から新居で使えるよう事前に契約をしておく。
- エアコンや洗濯機等は取り付けが必要になることを忘れずに。自力でできない場合は業者に依頼する必要あり。
6. 役所へ届出を提出する
現在住んでいる場所から同一市区町村内に引越しをする場合は「転居届」を役所に届け出ます。同一でない地域へ引っ越す場合は「転出届」を届け出ます。転出届を出す場合、引越し先で出す「転入届」で時に必要となる「転出証明書」を発行してもらえます。転居届も転出届も引越しの2週間前から届け出可能です。
届け出に出向く際には、健康保険証および介護保険証といった証明証(持っている場合)、印鑑、マイナンバーカード、パスポート、在留カード等の身分証明書を持参します。*届け出に必要な提出物は世帯の構成等で異なります。詳しくはお住まい地域の役所にお尋ねください。
ポイント
- 日本を離れ、海外へ引っ越す場合にも転出届は提出する必要あり。海外への引越しの場合、「転出証明書」は後々必要ないので発行されない。
- 現住居地と異なる市区町村にへと引っ越す場合で、国民健康保険の加入者である場合は「資格喪失手続き」が必要。この手続きは引越し後でも可能だが転出の届を出す際に合わせて行うと、引越し後に旧居住地の役所へ行く手間が省ける。
- 郵送でも届け出は可能。住んでいる地域の役所のウェブサイト等で方法を確認。
7. ご近所に挨拶
集合住宅に住んでいる場合は引越し作業で迷惑をかけることもあるので、ご近所に挨拶しておくとお互い気持ちよく事を運べます。小さい子供がいる場合、お友達との別れがちゃんとできるようにしてあげたいものです。
8. 最後の晩餐
冷蔵庫にある食べ物は引越しの前日までに食べきらないと厄介です。献立を工夫して最終的に冷蔵庫をカラにします。冷蔵庫の電源は引越しの前日の夜までには電源を切り、冷蔵庫内にたまった氷を除去しておきます。
9. 引越し当日:荷物の搬出
引越し当日、引越し用のトラックで業者がやってきます。業者の到着前までに、直ぐに荷物を運び出せるような態勢にしておくと作業がスムーズです。
ポイント
- 引越の最後は部屋やトラックなどに荷物が残っていないか、引越業者と一緒に確認。
- 荷物を運び出した後、部屋をきれいにしておく。汚いとクリーニング代の請求に大きく関わってくる可能性あり。
- 1人暮らしの場合、荷物を積んだトラックの到着を先回りして新居で待っていられないことがある。その場合は積み荷完了を待たずに新居へと先に向かうという選択肢も検討。もしくは追加料金で先に到着した業者に待ってもらうか、翌日に配達してもらうことになる。
立ち合い
荷物を全て運びだした後、大家さんまたは管理している不動産と立ち合いを行います。立ち合いでは部屋の状況を確認。部屋の汚れ具合・破損等をチェックします。本来ならば敷金は全額返還されるべきですが、実際にはクリーニング代、修復などが現状回復費として敷金から差し引かれるケースが多いです。立ち合いが引越し日にできない場合は翌日以降にしてもらいます。
10. 引越し当日:新居への荷物の搬入
引越し先である新居で引越し業者のトラックが来るのを待ちます。トラックが到着したら、事前に考えていたレイアウトに沿って設置場所を伝えていきます。ダンボールの荷物は自分で開梱します。
ポイント
- 荷物搬入前に室内の傷等をチェックしておく。写真を撮っておくとよい。賃貸物件の場合、退去時の敷金返金の額に関わってくる。
- 冷蔵庫は設置後1時間ほど待って安定してから電源を入れる。
- その日の夕飯をどうするか考えておく。
- トイレットペーパーを用意しておくことを忘れずに。無いと必ず困るハメになる。
- ご近所に挨拶しておくと、その後、より気持ちよく生活できはず。
11. 引越し後日、届け出の諸手続きを済ませる
諸手続きの内容はおかれている生活の状況によって異なりますが、必要となる届け出は主に以下のようなものです。
ポイント
届け出の多くは役所に提出するものがほとんど。何度も足を運ばなくてすむように、必要な届け出をリストアップしてまとめて提出できるようにする。
- 役所への転入届
*必要です。転居後14日以内に必ず役所へ届け出を提出ます。転出証明書、マイナンバーカード、とパスポート、在留カード等の身分証明書を持参します。
*届け出に必要な提出物は各役所、世帯の構成等で多少異なります。詳しくは役所にてお尋ねください。 - 国民健康保険に加入している場合、役所に住所変更または再加入する
*新旧居住場所が同じ市区町村内の場合は住所の変更届を役所に出します。市区町村が異なる場合は、旧居住地の役所で国民健康保険の「資格喪失手続き」を行い、新居住地の役所で「 加入手続き」を行います。会社勤めで社会保険に加入している場合は会社が対応してくれます。会社の管理担当に住所変更を連絡すれば自分での手続きは不要です。
- 国民年金の登録住所変更の届を役所に出す(加入している場合)
新住所の市区町村役所にて住所変更の手続きします。 - 会社勤務の場合、職場への住所変更届け出
*住民税の納付先が変わるため、連絡しないと問題が生じます。変更届の提出時に住民票が必要になるのであらかじめ入手しておきます。 - 厚生年金に加入している場合、勤務先に「被保険者住所変更届」を提出
会社に勤めている場合の年金保険はこちらにあたります。 - 大使館に提出してある在留届の住所変更
在外公館から緊急連絡等を受けるためにも重要です。 - 学校への転入届
役所または転校先に出向いて相談してください。 - 郵便局に住所変更を届け出る
旧住所宛の郵便物を1年間にかぎり転送してもらえます。 - 銀行口座の住所変更
- 自動車免許証、母子手帳等の住所変更
*更新や大切な連絡が間違いなく届くように、住所変更の諸手続きは怠らないように。 - 自動車登録の住所変更(所有している場合)
軽自動車、バイクも住所変更は必要です。税金の支払い関わってきます。日本から出国するなら廃車手続きを忘れずに。 - ペット(犬)の登録住所変更を届け出る
狂犬病予防法等に基づき、犬の登録が義務付けらています。 犬を飼っている場合、新住所へ転入してから30日以内に自治体で犬の登録住所の変更手続きをします。 手続きの際には、旧住所で受けた鑑札、狂犬病予防注射済票を持参します。 - ゴミの出し方を知る
*町内ごとに決まった選別のルールとゴミ出しの曜日あり。
英語版記事:The busiest moving season in Japan and tips and advice on apartment moving