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外国人向けツアーガイドを経験して学んだこと

2018年に通訳ガイドの制度が変わり、資格なしでも有償の通訳案内業務が行えるようになっている。企業が社員の副業を認める動きが広がる中、バイト的に通訳ガイドをやろうという人の数は今後さらに増える見込みだ。しかし、通訳ガイドという仕事は誰でもできるものなのか?どれくらいの難度なのか?そんな疑問を持ち、実際に体験して検証してみることにした。

外国人の工場見学ツアーの引率・ガイドを体験する

体験したのは外国人の工場見学ツアーの引率兼任ボランティアガイド。対象は社会人学生10名のグループだ。訪問先は東京都内の下町エリアにある2か所の町工場で、路線バスで現地へと向かい、昼食をはさみつつ工場から工場へは歩いて移動・訪問し、最終的に解散場所となる駅近くの施設まで連れていく、という行程になっている。主な役割は参加者を見学先に連れて行く引率で、補足的に通訳するというものだ。行程表と参加者リストは主催者から配布された。行程表にはスケジュールに併せて昼食場所への連絡や集合場所での人数確認のタイミングが記載されており、その指示に従って動く運びになっていた。

ガイド体験当日までの準備

行程表の指示通りに動くボランティアとして引き受けてはみたものの、なにしろ初めての体験だ。責任を感じて考えるほどに心配になる。兎も角も安心材料を集めて緊張を和らげようと、できる範囲で準備をすることにした。実際に準備した内容は以下の通りだ。

ツアーガイド経験の感想・学んだこと

参加者はいずれも協力的かつフレンドリーな社会人学生だったため、引率面ではトラブルなく無事に終えることができた。行程表も用意されていたので、スケジュール面で戸惑うことはなかった。しかし、通訳者としては全く機能せず、しどろもどろで散々たる有様のまま終わった。思い出すのが辛い。そんな苦い経験から学んだことを、準備した内容に沿って以下にまとめてみた。

バスの時刻表・乗り場・移動時間をチェックしておく

バス乗り場は足を運んで調べておいてよかった。時刻表や移動時間はネットで調べられたが、停留所が集まるバスターミナルからの出発だったので、乗るバスの停留所がどこにあるか知っておく必要があった。

外国人ツアー客は時間を気にしない傾向があるので、移動に掛かる時間は多めに見積もって行動した方がいい。観光気分になると、よそ見をしながらバラバラになって歩きがちだ。街中では自転車との思わぬ接触事故もありえると思った。

ツアー中、歩いて移動している時に子供の柴犬を連れて散歩をしていた人に出会い、ツアーメンバーみんなが犬に集まった。散歩の人は気軽に写真に応じて皆楽しそうだったが、ここで昼食スケジュールに遅れがでた。

交通事故等で電車やバスに遅延がでた時の対処を考えておく

楽観視せず事故が起きることを想定していた方がいい。電車が不通になってもバスで目的地に行きつける等、前もって知っていると心にゆとりができる。

下見をして情報収集

下見は必須だと実感した。工場で見学をする場合、機械類が設置されているので危険な場所がある。転倒しやすい場所もあるので事前チェックしておきたいところだ。見学後の集合場所にする施設入口・出口、トイレの場所も把握しておきたいものだ。

見学先では、外国人は興味を持ちそうな物・事をチェックしておくといい。日本人には普通に思える事でも関心を持たれることがしばしある。

担当者との事前打ち合わせ

通訳として立ち会う場合は、現場の担当者がどんな話をする予定かを確認して、内容に沿った下調べをしておく必要がある。一節が長くなると通訳するのが困難なので、話に切れ目を入れてもらう段取りをつけておく。話す内容の原稿があるならもらっておく。言葉で説明しづらい事項は補足情報として画像資料を用意しておく。

見学先のスタッフは熱意を持って案内してくれるために、話が長くなってしまう等でスケジュールが押してしまうことが想定される。昼食のセッティングや交通機関の移動の都合があることを事前を説明して理解していただく。

見学時の説明で使いそうな英単語を調べてリストにまとめる

説明の中で専門用語が出てくる可能性があるので英単語リスト作成は欠かせない。ただし、現場でリストを見ながら通訳するという行為は不可能に近い。頭に叩き込んで臨む必要あり。 和声英語で覚えてしまっている単語の記憶では発音にも注意する。(例:アルミニウム)

英単語リストをプリントアウトして・スマホに入れて持ち歩けるようにする

プリントは現場では役に立たないが、手元にあると安心する。

よく使う言い回しを覚えておく

昼食時や集合場所等での説明文の言い回しを覚えておく。忘れる不安がある場合はプリントして持っておくと安心。様々なツアーの共通場面で使えるので、反復して頭に叩き込んでおくのが理想。

参加者の特徴、名前・顔(写真で)を覚えておく、調べておく

街中を歩いている際、アジアからの外国人は日本人と見分けづらい。迷子になることを避けるために顔を覚えておく。客層にもよるが、ツアー客を名前で呼ぶと親しい雰囲気が作れる。ベジタリアンや宗教的な理由で食べられる食材が限られている人がいるかどうか事前に確認・段取りすることを忘れない。持病がある人の有無も確認しておきたい。

メモと資料をはさむクリップボード(またはタブレットPC)を持ち歩く

行程表と資料にあわせ、メモ書きをクリップボードに挟んで持ち歩く。実際にメモを取る余裕はないかもしれないが、一節が長い話を通訳しなければならない時に役立つ。

その他

ボランティア保険に入ってもらえてるか確認した方がよい。

まとめ - 「ガイド経験の積み重ね」と「笑顔」が物を言う

準備さえ怠らなければプロの通訳ガイドの仕事ぶりをまねることでなんとかなると考えたのは甘かった。かなり経験値がモノを言う。その日の天気、参加者の個性、唐突な質問の受け答え等々。臨機応変にもろもろに対応するスキルが求められると痛感した。

満足度の高いサービスを提供できる引率・ガイドになるためには、場数を重ねて緊張感をもちつつも冗談を言える余裕を身に着けることが重要と見た。そして、とにかく笑顔。不安な顔を見せるとツアー客が不安になってしまうので、ずっと笑顔で乗り切るのが大切。

 

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