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日本建築探訪:遠山邸(遠山記念館)を訪ねて

Toyamatei

田んぼ道を通り抜けた先に佇む広大な邸宅。
至高の銘材・意匠・技巧がさりげなく集結した近代和風建築。

東京の上野駅から電車で北上して約40分。桶川駅で下車し、バスに揺られて荒川を渡り、ほどなく川島町に着きました。歩きはじめるとそこに広がるのはのどかな風景。先へと進み、田んぼを抜け、細い道をのんびり行くと、大名屋敷を思わせる大きな長屋門が見えてきました。
遠山邸に到着です。

遠山邸は日興証券を創立した遠山元一(1890-1972)が、母・美以の住まいとして建てた邸宅です。元一氏が実家の衰退から起業して返り咲く道程を経た後、幼いころに手放した生家を再興し、苦労を重ねた母に住んでもらうために建築しました。現在、敷地内の家屋と庭園に加え、氏が収集した美術工芸品を保存公開する美術館で構成された「遠山記念館」となっています。

建設の着手は昭和8年。完成には2年7カ月もの月日を費やしています。設計当初に構想していた主屋は40~50坪という計画でしたが、徹底的なこだわりを重ねた結果、最終的には約400坪に及ぶ広大な広さに。大工事に関わった職人は延べ35000人。日本各地からの希少な銘材を調達し、当時最高の建築技術を駆使した末に完成した建物は、2018年に重要文化財に登録されています。

Toyama Memorial Museum

遠山邸の大きな特徴は、様式の異なる三棟の建物で構成されているところです。数寄屋造りの西館、書院造りの中棟、豪農風建築の東棟、といった趣の違う和風建築が、さりげなく互いの個性を際立たせています。各棟は分離されつつも長い廊下で連結し、自然な調和の流れがつくられているのが見事です。心地よく導かれるままに邸内を巡ることができます。

いずれの部屋にも派手な豪華さはない反面、静かに主張する豪華さには目を見張ります。どこかほっとする、懐かしい雰囲気を味わいながら、ふと細部の装飾に注目してみると、障子窓や欄間はもとより隅々に至るまで驚愕の技巧が施されていることに気づかされます。

伝統的な和風建築でありながら近代的な機能性が取り入れられている点も遠山邸の魅力の一つです。縁側のガラス戸には、日本で製造困難だったアメリカ製の大判ガラスを大胆に使用。座敷からの一望を考慮して庭園が周到に設計されています。畳に座わり、何も語らず、静かに眺めていたくなる風景です。

東棟居間
廊下の装飾
西棟7畳の間軒内
東棟表玄関
中棟から庭を臨む

遠山記念館

埼玉県比企郡川島町白井沼675
https://www.e-kinenkan.com/

入口の門をくぐり、庭を抜けた先の右手にある洋館風の建物が美術館です。美術館で入館料を支払ってから邸宅内を見学するようになっています。美術館で特別展等が開催されている時は入館料が変わります。

開館時間:10:00〜16:30(入館は16:00まで)
休館日:
月曜日(祝祭日の場合は開館、翌日休館)
年末年始(12月21日〜1月6日)
その他、休館日は公式ウェブサイトでチェックしてください。

入館料:大人 800円(団体:640円)
学生(高校・大学)600円(団体480円)
*中学生以下は無料
*団体20名様以上
*障害者手帳をお持ちの方は ¥200割引

東京方面からのアクセス

上野駅からJR高崎線
または
池袋駅からJR湘南新宿ライン
↓(約40分)
桶川駅
西口から「東武バス川越行き」乗車
↓(約13分)
牛ケ谷戸バス停*
↓徒歩(約15分)
遠山記念館

* バスの運行数はかなり少ないので、行き・帰りの時刻表をチェックしておくことをお勧めします。特にお昼の時間帯は要注意です。

  • 牛ケ谷戸バス停からやや歩くことになります。高い空の下、青々とした田んぼを眺めてのウォーキングは、外国人旅行者には新鮮な体験です。
  • 牛ケ谷戸バス停へは東武東上線・JR埼京線の川越駅、西武新宿線の本川越駅からもバスで行けますが、川越周辺の道路は混雑が予想されるので桶川方面からのアクセスの方がお勧めです。
  • 遠山記念館には駐車場があります。比較的大きな駐車場なので団体での見学にも向いています。
  • サイクリストなら桶川駅から自転車で行くというのも選択肢です。道はやや狭いものの、多少のアップダウンがあるだけで比較的走りやすいルートです。桶川の東口で自転車レンタルが利用可能。ただし、貸出し数はわずかです。日祝は要予約。
  • 遠山邸とその周辺には食事処はありません。最も近いのは「平成の森公園」の北側にあるレストランです。遠山邸から歩いて約15分。日・月休(月1回土曜不定休)です。

遠山邸とその周辺の季節の楽しみをいくつかピックアップしてみました。開催イベントの日程、詳細は公式サイトをご覧ください。

  • 遠山邸ではひな祭りの時期に壮麗な雛人形が展示されます。
  • 6月中旬、近隣の桶川で
    ベニ花

    が見頃を迎えます。江戸時代、中山道の宿場町だった桶川は、有数のべに花の産地として栄えました。遠山邸とあわせて観光してみてはいかがでしょうか。

  • 遠山邸の長屋門の横にある蓮池が美しい季節になります。
  • 毎年7月15日・16日の夕刻に桶川祇園祭が開催されます。中山道桶川宿の伝統を伝える夏祭りです。
  • 桶川・川島エリアはコシの強い武蔵野うどんが名物。夏のおすすめは、刻んだ夏野菜を入れてゴマとみそで味付けした汁で食べる「すったて」うどんです。

英語版記事(digi-joho TOKYO TRAVEL)
Toyama-tei (Toyama Memorial Museum)

記事公開:2020年7月

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